皮膚科で脂漏性皮膚炎と診断されて、お薬を処方される方は多いと思いますが、ご自身がお使いのお薬を理解している方が少ない印象です。
今回は皮膚科クリニックで処方されるお薬についてと、セルフケアでの症状緩和に役立つ情報などを説明していきます。
少しでも内容がお役に立てることを願っております。
そもそも脂漏性皮膚炎はマラセチア真菌と呼ばれるカビの一種が肌の皮脂を餌に増殖し、悪さすることで起きる皮膚炎です。
皮脂を分解する際に分泌されるリパーゼと呼ばれる酵素が、皮膚の炎症やかゆみ・湿疹を引き起こすと考えられています。
またストレスや生活習慣の乱れなども影響します。
では、どのようなお薬が有効なのか説明していきます。
病院で処方されるお薬
ニゾラール(ケトコナゾール)
ニゾラールは根本的原因であるマラセチア真菌に対して強い抗真菌作用を示すお薬です。
また、角質層への浸透性・親和性が優れており、効果持続時間が長いのも特徴です。
フケや湿疹がでている部分に1日1ー2回塗ることが推奨されており、副作用が起こる可能性も低いためお医者様の指示通りに使い続けることが重要です。
ローション・クリームタイプがあり、患部の使いやすさによって使い分けます。
コムクロシャンプー
処方薬として唯一のシャンプー剤。
ステロイド成分のクロベタゾールプロピオン酸エステルを配合しているため頭皮の広範囲で炎症が起きている方には使いやすい。
もともとは乾癬用のお薬として処方されていましたが、2021年2月に「頭部の湿疹・皮膚炎」も保険適応となり、多くの患者様に処方されるようになりました。
使い方は、手にお薬を取り頭皮に塗布する。その後、15分程度置いたら、あとは普通のシャンプーと同じように洗髪し、しっかりと洗い流してください。
これまでのステロイドに比べ、洗い流すことから副作用も出にくいと考えられています。
一つ問題点としては、お薬の作用を優先するためシャンプーとしての機能はイマイチ。
髪のパサつきなどが気になる際は、お使いのシャンプー&トリートメントで二度洗いするのがおすすめです。
ステロイド剤
炎症を抑えるお薬として、皆様も一度はお使いになられたことがあると思います。
別名、副腎皮質ステロイド薬。
脂漏性皮膚炎の方はもちろんですが、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎など多くの皮膚疾患で用いられるお薬です。
種類が豊富で、5つの強さで分かれています。
上から順に強いです。
成人の場合、Strongestは頭皮にvery strongやstrongは体にmediumは顔にと、体の部位の吸収率の違いや症状の重症度によって使い分けます。乳児や小児の場合、皮膚が薄いためweekやmidiumが処方されるケースが多いです。
ステロイド剤を毛嫌いしてしまうかたもいらっしゃいますが、治療を進めていくには必要なお薬です。
よく耳にする怖い副作用、顔が腫れてしまったり・感染症を起こす・骨がもろくなるなどの症状は主に内服や注射で起こる症状のため、外用剤でお医者様の指示通りに使っていれば、副作用が起きる可能性は、極めて低いと考えられています。
効果を高めながら、安全に使うためには次の4つを守りましょう。
①使用回数は基本的に1日1~2回程度
添付文章上は使用回数が1日1〜数回になっていますが、多くの医師の処方箋では1日1〜2回で処方されている事が多いです。かゆい時に頻繁に塗ってしまっている方は、まずは使用回数を見直してください。医師の指示どおりの回数を使い症状が治まらない場合はお使いのステロイド剤が合っていない事が考えられます。またかゆみが強い時はかゆみ止めの内服薬を併用しましょう。
②塗る量はFTU(フィンガーチップユニット)を参考に
ステロイド外用薬の場合、薬の効果をしっかり得るために塗る分量の目安としてFTU(フィンガーチップユニット)と呼ばれる単位が使われています。FTUは大人の人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量で、チューブタイプ(口径が5mm程度)の軟膏やクリームでは、1FTU=約0.5gに相当します。1FTU(約0.5g)は、大人の手のひら2枚分の面積(体表面積の約2%)に塗るのに適した分量の目安になります。ご自身の患部の広さを見てFTUを参考に塗りましょう。
③塗る際は絶対に擦らない
薬局勤務時代にステロイド剤で症状が悪化してしまった人の多くは塗る際に患部をゴシゴシこすりながら薬を塗り込んでしまっている方に多く見られました。擦る事で刺激になりますので、絶対に塗る際は擦らないようにしましょう。
④ステロイド剤をやめる際に急にやめると症状がぶり返しやすくなる
ステロイド剤はリバウンド現象と呼ばれる、急に使用をやめると症状がぶり返す特徴があります。まず炎症がある際は医師に決められた回数を毎日使いましょう。そして症状が落ち着いてきたらすぐにやめるのではなく、まずは使用回数を2回から1回に減らし、更に良くなったら、1日置き、2日置きと使用間隔を徐々に開け使用をやめる事が必要です。症状があるにも関わらず塗ったり、塗らなかったりしている方は症状が治りにくく、この事がステロイド剤の慢性化使用に繋がり、副作用が起きるリスクに繋がるので注意が必要です。。
なるべくステロイド剤を使いたくないと考えられている方は多いと思いますが、正しい知識を身につけ、上手に使えればステロイド剤は症状改善の手助けになるはずです。今回記載した内容は一般的な考えで人それぞれ皮膚の状況は異なりますので、ご自身の判断で中止する前に主治医や薬局の薬剤師にまずは相談しましょう。「病は気から」との言葉もあるようにまずは不安な気持ちをなくすことが大切ですよ。
抗アレルギー剤
脂漏性皮膚炎の方で、痒みに悩まされている方も多いと考えます。
患者様との話でよく耳にする「ステロイド剤を塗っても痒みが引かない。」先ほど説明したようにステロイド剤は炎症を抑えるお薬のため直接痒みを和らげるお薬ではないのです。
また痒みの原因の多くは体内でかゆみを引き起こす物質、ヒスタミンによる場合が多く、外側からのケアを一生懸命されてもなかなか改善されないケースが多いです。
痒みに悩まされている方は内服の抗アレルギー剤を医師に相談しましょう。
現在服用中の方も抗アレルギー剤については、どの薬が一番強いなどはなく、体質に左右されるため服用中でも痒みを強く感じる場合は、お医者様に相談して他のお薬を処方してもらうのがおすすめです。
よく処方される抗アレルギー剤を3つ紹介します。
①ビラノア
使用方法:1日1回 空腹時
空腹時の服用タイミングが難しい方もいるかもしれないが、血漿中濃度の上昇が速やかなため即効性にも期待できる。
②アレグラ
使用方法:1日2回 朝・夕
1日2回服用だが、眠気はほとんど出ないことから、もっとも使われているお薬。
③ルパフィン
使用方法:1日1回 就寝前
アレルギーの原因となるヒスタミンだけではなくPAF(platelet activating factor:血小板活性化因子作用)を抑える新しい作用機序のアレルギー性疾患治療薬です。
遅発型アレルギーにも効果があり、重篤な症状の時にでることが多いです。ただし眠気が出やすいお薬のため自動車運転を避ける必要があります。
市販でのセルフケア
ビタミン剤
脂漏性皮膚炎の改善にはビタミンB2・B6を積極的に摂取しよう。
ビタミンB2は、脂質の代謝に深く関わっています。皮脂の分泌を調節する作用があるので、別名「皮膚のビタミン」と呼ばれているのです。しかし、ビタミンB群の中でも不足しやすい傾向があり、普段からビタミンB2が多く含まれている食事をすることが望ましいといわれています。
ビタミンB6は、細胞の新陳代謝を促すはたらきがあります。ビタミンB6が不足すると、皮膚疾患、神経障害、ビタミンB6反応性貧血になることがあるので、脂漏性皮膚炎の方には重要と考えられています。
食事で摂取するのが望ましいですが、難しい方はサプリメントなどで補うことも大切です。
シャンプー
お使いのシャンプーを見直しましょう。まず脂漏性皮膚炎の方はお肌が一般の人に比べて弱いため強い洗浄力のシャンプーは控える必要がございます。まずは低刺激かつアミノ酸系のシャンプーを選ぶことが大切です。
その上で抗炎症成分や殺菌成分が含まれてるものを選ぶのが特におすすめです。シャンプーに含まれる代表的な抗炎症成分は、グリチルリチン酸ジカリウムやオタネニンジン根エキス、カミツレ花エキスなどがあります。代表的な殺菌成分はサリチル酸、ミコナゾール、オクトピロックス又はピクトンオラミンなどがあります。
OTC薬
病院に通院が難しい方は、市販薬でも脂漏性皮膚炎のケアができるものがございます。
例えば抗アレルギー剤のアレグラなどは花粉症の改善薬としてドラッグストアーでも購入が可能ですので、痒みがひどい方などは試してみるのが良いでしょう。
それでも改善されない場合は早めの受診をおすすめいたします。